PORTLAND日記

ビールとコーヒーを愛する2人のつれづれなる日々

ACE HOTELで考えた「ホテルの役割」

エースホテルでミーハー気分??

一度でもポートランド旅行を計画したことがある人なら、きっとご存じの定番ホテル。

NY、カリフォルニア、シカゴなど全米に8カ所。ロンドンにもあるほか、2019年には京都にもオープン予定!創業地はシアトルだが、現在の本拠地はここポートランドなのだ。

Ace Hotel Portland | Boutique Hotel in Portland, Oregon

 

 それは、ポートランドに引っ越して来た初日のこと。

まだ家探し中の我々は、しばらくホテル暮らしをしなければならなかった。当然、ACEホテルも頭によぎったが、「こんなオシャレホテルに泊まるなんて、いかにも過ぎるよねぇ・・・」と実は冷ややかに見ていた2人。

しかし、斜に構えながらもミーハーは私は、「・・・でも、せっかくのポートランド生活のスタートだし記念に泊まろうか・・・」と方針転換。

あっさり心を動かされ、思い切って泊まってみたのだった。

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くすぐる旅ごころ

やっぱりオシャレなホテルだった。客室のちょっとした飾り付け、洗面所や浴槽などのさりげないこだわり。

1912年に建設されたホテルを改装しているので、間取り、廊下、階段などに古さを感じさせるとろこもあるが、それが見事に味わいに昇華。

私は建築やデザインの素養のない一般人だが、それでも「うーむ、アートだなぁ」と感動せずにはいられなかった。

ホテルがNYやサンフランシスコほど高くないポートランドでは、同じ料金を払えば、もっと新しく、快適なところに泊まることも十分可能だろう。

ただ、ACEホテルには、「なぜポートランドを訪れたのか」という理由のひとつが隠されているような気がした。

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ホテルの役割

さてさて、ここからが本題。

「ホテルの役割」とは何だろうか。私はホテルマンでも経営者でもないが、ここに宿泊してみて、ホテルの存在意義について強く意識するようになった。

ホテルとは一般的には「旅行や出張で泊まる場所」であり、大きなホテルだと「結婚式や大きな会合をする場所」だろうか。「美味しいレストランやバーがある場所」という利用のしかたもありそうだ。

 

私がエースホテルで感じたことは、ホテルとは「街の顔」だということ。特に、このホテルの最大の魅力はロビーだと確信した。

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実に多くのひとが訪れ、思い思いの時間を過ごしていた。

コーヒーを飲むカップル、読書をする男性、おしゃべりする女子グループ・・・などなど。そして、大半のひとは宿泊客ではなさそう。ベビーカーを押しながら、散歩がてらにくつろぐ夫婦。観光客だろうか、ロビーで写真撮影をする姿もよく目にする。

買い物袋を足元に置き、何時間も編み物をしている地元の住民らしき老婦人を眺めていると、こちらの心までも穏やかになってくる。

そして驚いたのは、ソファーで座ってコーヒーを飲んでいる我々の横で突然、出張美容室がオープンしたこと!

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「ここってホテルのロビーだよね??」という我々の常識はもう通用しない。美容師さんと客の会話に耳を傾けていると、どうやら毎月髪を切りに来ている常連さんのようだった。

ちなみにロビーの利用は美容室にとどまらない。宿泊中は、地元バンドと思われるミニライブも連日開催されていた。

私のような遠方からのイチゲンさんも、世界中からの観光客も訪れる場所。そして、長年暮らすポートランド市民をも魅了する場所。それがこのエースホテルのロビーだった。

 

 

なぜ集うのか

ポートランドには歴史がもっと長く、大きなホテルはいくつもある。それらのホテルと比べると、ACEホテルのロビーは決して大きくはない。

しかし、実に多くの人が引き寄せられるように集まっている。

 

ロビーの隣には、ポートランド発祥で、いまや全米を代表するロースターに成長しつつある「スタンプタウン・コーヒー(STUMPTOWN COFFEE)」がある。

しかも、なぜかホテルのロビーとつながっているという不思議なつくり。カフェで飲むより、ロビーで飲む方が断然落ち着く。

そして、これまたロビーとつながっているのがお隣にある「CLYDE COMMON(クライド・コモン)」というレストラン兼バー。ポートランドのローカルビール、オレゴン産ワインも豊富で、夜遅くまで若者でにぎわっている。

ちなみに、買ったビールをロビーで飲んでいるひとも当然ながらいた。

 

しかし、カフェやレストランがあるだけで人が集うわけでもないだろう。ほかのホテルにだって同じような施設はある。

このロビーが醸し出す何とも言えない雰囲気。その源は一体どこにあるのだろうか。答えはいまもわからない。ただ、「ホテルのロビーは街の公共空間だ」という哲学をACEホテルの姿勢からひしひしと感じる。

ポートランドで暮らし始めた私は、いまでもときどき立ち寄っては読書をしたりしている。というか、このブログもACEホテルのロビーで書いているところだ。

 

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ポートランドは人口約60万人。決して大都市ではない。

こうした「街の顔」としてのホテルを中心部に持つことは、観光客にとっても市民にとっても幸せなことだろう。

日本の地方都市でも、多くの人が集い、愛されるホテルのロビーが増えていけば、街がもっともっと面白くなっていくのかもしれない。

 

 (なお)